大阪高等裁判所 昭和35年(く)80号 決定 1960年11月14日
少年 A
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告理由は抗告申立書記載のとおりであつて、その要旨は中等少年院送致を言渡した原決定の処分は、著しく重すぎ不当であるというのである。
よつて右少年に対する詐欺保護事件記録及び少年調査記録によると、原決定も説示しているとおり、少年はいわゆる早発性非行少年であつて、児童福祉司の指導を受けたこともあつたが、非行はやまず、昭和三四年一二月四日保護観察に付され、担当保護司の熱心な指導と補導援護にも拘らず、本件詐欺非行に及んだものであること、実父Gは少年の七才頃から実母である抗告申立人と別居して内妻と生活し、少年に対する愛情に欠けるものがあり、少年自身も実父に不満を抱いているため、父の保護能力は疑わしく実母の抗告申立人には愛情はあるが、盲愛するだけで、保護の熱意は認められてもその能力は期待できないこと。実母のヒステリー性性格から、父方祖父との同居による本人の安定生活も保障し得ない状態であつて、その家庭をめぐる保護環境は決して良好でないこと、等が窺われるから、このような現状において在宅保護による少年の矯正補導は、到底その効果を期待し難く、少年の将来のためにはむしろ施設収容による保護に俟つほかないものと思われるのである。抗告申立人は、抗告理由中において縷々陳弁しているが、所論事情を考慮しても、在宅保護を妥当とする結論には到達しないのであつて、原決定が中等少年院送致の言渡をしたのは相当というべく、本件抗告は理由がない。
よつて、少年法第三三条第一項後段に則り主文のとおり決定する。
(裁判長判事 小田春雄 判事 山崎寅之助 判事 竹中義郎)